遺言書作成当時,Gは事理弁識能力を十分有していた。
この時期, 被告Dは,Gから仮登記担保法に基づく受戻権行使の依頼を受けて供託 を行っており(平成12年4月24日,同年5月1日),被告ら自身, Gに事理弁識能力があることを前提として行動を取っていた。
また,J と被告D間における目録20及び21の土地の所有権を巡る2つの訴訟 は,その前後にわたり係属しており,Gは証人として証言し(平成11 年3月29日),上申書への署名押印(平成11年5月25日)をする など,当事者として関与していたのであって,この間,Gが老人性痴呆 症であったことはない。
イ被告らの主張 (ア) 原告らが第2遺言と主張する書面(甲24)は,Gの意思に基づく ものではなく,実体的にも形式的にも,Gの遺言とはいえない。
(イ) 内容の不合理性 a町農業委員会の農家基本台帳に登録された農家であるK家の農業経 営主であったGは,昭和53年2月22日,K家の農業経営主の地位を 長男の被告Dに委譲し,同年3月23日,農地法3条の許可によりGの 耕作権の全てを被告Dに譲渡した。
ところが,原告Aの夫であるJが, 目録20及び21の土地を土地改良事業による換地手続を利用して隣地 のOに売却しようとしたことにより紛争が生じたため,Gは,平成11 年4月28日,公正証書遺言として第1遺言を作成した。
このような事 情からすれば,Gが第1遺言と矛盾する第2遺言を敢えて作成するはず はない。
(ウ) 判断能力の欠如 Gは,大正6年11月17日生まれであり,平成12年ころには80 歳を超える高齢となって,急に足腰も弱まり,失禁症状も出て老人性痴 呆症の症状が出始めていた。
そして,Gは,平成12年2月には,自宅 階段から落ちて頭部を打ち,b町のc病院に入院し,同年6月ころに退 院して,自宅で安静療養し,同年11月30日,83歳で死亡した。
第 2遺言の日付は,「2004年4月28日」とされており,c病院の入 院中の時期であること,その筆跡は,いかにも弱々しく乱れており,G の自筆によるかも不明である。
仮に,その書面の全文がGの自筆による としても,Gは,その当時,高齢と老人性痴呆症の進行により,既に事 理弁識能力が失われ,判断能力がなかった。
結局,Gは,原告C及び妻 のIから言われるがままに甲24に署名したにすぎない。
したがって, 第2遺言は,Gの真意に基づく書面ではなく,遺言の効力を有しない。
(エ) 第1反訴請求 目録19の土地については,原告Cを権利者とする条件付所有権移転 仮登記がされているが,上記のとおり第2遺言は無効であり,上記土地 の所有権は第1遺言により被告Dが取得した。
よって,被告Dは,原告Cに対し,所有権に基づく妨害排除請求とし て,上記土地の仮登記につき抹消登記手続を求める。
(2) 争点2(生前贈与)について ア被告らの主張 (ア) Gは,平成9年8月5日,目録20の土地を被告Dに,目録21の 土地を被告Eに,目録22の土地を被告Fに,それぞれ贈与した。
その 経緯は以下のとおりである。
目録20及び21の土地は農家であるK家にとって必要不可欠な大切 な農地であった。
ところが,Jは,平成3年11月25日,Gに400 万円を貸し付け,上記不動産を担保に取っており,これを奇貨として, 上記土地を売却して不当に利益を得ようと画策していた。
Gと被告Dは, 平成9年5月末,Jの上記企てに気付いた。
そこで,Gと被告Dは,上 記土地を取り戻すべく,Jに対して弁済金の受領を求めたが,受領を拒 否されたことから目録20及び21の土地を守るため,一刻も早くGか ら被告D及び被告Eに所有権及び登記名義を移転することとした。
こう して,Gと被告らは,目録20ないし22の土地について,平成9年8 月5日付けで所有権移転登記手続を行った。
(イ) 時効取得とした事情 目録20ないし22の土地は農地であったため,所有権移転登記手続 をするには,農地法3条所定の農業委員会の許可が必要であった。
しか し,その取得のためには1,2か月程度の期間を要することから,Gと 被告らは,一刻も早く所有権移転登記手続を完了させるため,登記手続 に農地法3条の許可書の添付を要しない時効取得を登記原因として所有 権移転登記手続をすることにした。
なお,被告Dは,昭和53年2月22日に,Gから委譲されてK家の 農業経営主になっており,同年3月23日,上記不動産を含むGの耕作 地の耕作権を農地法3条の許可により全て引き継いでいた。
したがって, 被告Dは,G名義の上記不動産についても,農地法3条の許可により使 用貸借権の設定を受けていた者であるから,Gと被告らが,目録20な いし22の土地の所有権移転につき,本則に従って農地法3条の許可申 請手続を行っていても,間違いなく許可が下りたはずである。
賦課要件
特別掛金を賦課する処分は,一方的に相手方に金銭の納付を命ずるという不利益処分であり,滞納処分の適用もあるという点で権力的な行為であるから,課税処分の場合と異ならず,租税法律主義(憲法84条)の趣旨が準用されるというべきであり,特別掛金の賦課は,賦課要件が明確に定められた法律上及び規約上の規定に基づいて行われなければならず,拡大解釈は許されない。
この点,規約附則20条は「この基金の設立事業所でなくなる事業所」と規定し,規約附則21条は「設立事業所から脱退の申し出があったときは」と規定していることから,特別掛金を賦課するためには設立事業所が設立事業所でなくなったことが要件となる。
原告は,原告事業所の加入員のうち,分社に伴い原告を退職した従業員39名については資格喪失届を提出したが,5名は引き続き被告の加入者であり(加入者の存在),原告も設立事業所として残る意思であり,脱退の申出は行っていない。
以上によれば,本件は規約附則20条以下の設立事業所でなくなったときに当たらず,特別掛金の賦課の要件を欠いている。
被告は,設立事業所の任意脱退と同視できる場合あるいは任意脱退に準ずる場合には特別掛金を賦課することができる旨主張する。
しかし,任意脱退と同視できる,あるいは準ずる場合に特別掛金を賦課することができるとする規約上の根拠はない。
また,「任意脱退」に当たるかどうかの解釈論に争いがあるとしても,本件は加入者が44名から5名に減員になったというものであって,減員前の加入者に対し11パーセントの加入者が引き続き加入者として残っているケースであるから,減員の程度として加入者全員が資格喪失したケースと同視できるものではないし,原告は被告に脱退の意思表示をしたことはなく,設立事業所としての地位を引き続き有しており,被告も原告を引き続いて設立事業所として扱っている。
以上からすれば,本件届出行為を任意脱退と同視,あるいは準ずるものと解釈することは,文言解釈論の限界を超えているというべきである。
イ原告らの主張 目録20ないし22の土地に関する所有権移転登記は,被告らがGと共 謀して,Jからの執行を逃れるために作出した虚偽の登記である。
仮に生前贈与の意思表示が認められるとしても,目録20ないし22の 土地は農地であるから,農地法に基づく許可がない以上,所有権は移転し ていない。
ウ被告らの反論 前記ア(イ)の事情からすれば,農地法の許可がなくとも,所有権移転の 効力は否定されないというべきである。
また,被告らを農家基本台帳に登 録しているa町農業委員会が,目録20ないし22の土地をGから被告ら に譲渡するについて,農地法3条の許可申請があれば許可する見込みであ る旨回答していること(乙12)も重視すべきである。
(3) 争点3(建物の評価額)について ア被告らの主張 建物(延床面積212.64)については,被告Dが昭和62年8 月12日,国民金融公庫から750万円を借り入れて修繕,増築(約42 )して価値を増加させており,返済も被告Dが行った。
したがって,同 建物に対するGの遺産としての評価は,増築前の面積を基準とし,鑑定書 の評価額に約0.8を乗じた額,すなわち,相続開始時点で214万40 00円,鑑定時点で95万2000円と評価すべきである。
イ原告らの主張 被告Dは,国民金融公庫から,自らが代表者を務める有限会社K産業の 事業資金として750万円を借り入れ,これを修繕・増築の費用に充てた。
被告らは,上記建物を含む建物に家族らで居住し,これを会社本社として も使用しているが,賃料等の使用料を負担したことはない。
仮に被告Dが 借入金をもって修繕・増築に充てたとしても,それは,建物の使用料相当 分として投下されたものとみるべきであり,被告Dが,建物に対して共有 持分を有しているとみることはできない。
(4) 争点4(相続債務の額)について ア被告らの主張 被告Dは,以下のとおり,Gの債務について,合計1330万4050 円を立替え弁済した。
(ア) 被告Dは,GがJから平成3年11月25日ころに借り入れた40 0万円とこれに対する損害金等として,以下のとおり525万6850 円を弁済供託した。
a 平成10年1月13日400万円(乙14の1) b 平成12年4月24日43万円(乙14の2,3) c 平成12年5月1日82万6850円(乙14の4) (イ) MがGに対して提起した土地売買代金返還請求訴訟につき,被告D は利害関係人として参加して和解した。
そして,被告Dは,Gのために 平成12年4月28日から平成18年12月13日までの間Mに合計5 00万円を弁済した。
(乙15(枝番),乙18(枝番),乙23,乙 24等) (ウ) 被告Dは,Gが親戚のNから借り入れた300万円について,昭和 60年3月10日,Gのために弁済した(乙16,乙22)。
(エ) 被告Dは,過払いになっていたGの軍人恩給金4万7200円を, 平成16年5月10日,返済した(乙30の2)。
(オ) 上記合計1330万4050円は,Gの法定相続人である原告らに おいても,その法定相続割合において負担すべきものである。
したがっ て,原告A,原告B及び原告Cは,被告Dに対し,それぞれ266万0 810円の求償債務を負担している。
(カ) 相殺の意思表示 被告Dは,平成19年10月26日の本件弁論準備手続期日において, 原告らに対し,上記各266万0810円の求償債権を自働債権として 原告らの遺留分請求金額とを対当額で相殺するとの意思表示をした。
(キ) 第2反訴請求 仮に相殺の主張が認められない場合に備えて,被告Dは,第2反訴請 求として,上記(ア)ないし(ウ)の合計額1325万6850円の求償債 権につき,原告らに対して法定相続分に従い,各265万1370円及 びこれに対する第2反訴事件の訴状送達の日の翌日である平成21年2 月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の 支払を求める。
イ原告らの主張 (ア) Gの債務の存在及び被告Dの弁済の事実は,不知ないし否認する。
被告Dの預貯金の原資はまったく不明である。
被告Dは,G及びHの 預貯金を管理しており,Gらの預貯金から現金を引き出し,被告Dの口 座へ移すことによって,これら弁済金の一部に充てていた可能性がある。
当時,被告Dにはみるべき収入はなかったはずである。
また,借入金の 使途は,被告らが居住する家屋や工場の増改築費用,生活費等に充てら れた可能性が極めて高い。
(イ) 消滅時効 a 本訴事件 被告Dが,Gの債務を立替払したことによりGに対して求償債権を 有していたとしても,Nからの借入金に関する求償債権は,平成7年 3月10日の経過により時効消滅した。
原告らは,平成17年11月 21日の本件弁論準備手続期日において,被告Dに対して,上記消滅 時効を援用するとの意思表示をした。
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